【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第5章 背中に触れた時
安室side
リラがシートベルトをしたのを確認して、僕は車を発進させた。
「わざわざ、ごめんね?
タクシーがなかなか捕まらなくて…」
「大丈夫ですよ。言ったでしょう。
いつでもすぐに飛んでいくと」
そう言うと、リラはまた顔を赤くした。
最近思う。
僕はこの彼女の反応を見たくて、ワザとキザなことを言っている節がある。
「今日は、雑誌のインタビューですよね?」
「うん!なんか音楽性とか色々聞かれたんだけど、上手く答えられなかったな…
ただ、歌が好きなんです。ばかり言って、ライターの人困ってた」
たはは…と笑いながらそう言うリラ
その笑顔を見ていると、「歌が好き」それだけでいいんじゃない?と言ってしまいそうになる。
「好きなことを好きと言えるだけで、すごいと思いますよ」
「…安室さんは、カフェの仕事、好き?」
「…そうだね。好き…かな」
本業じゃないから、好きかどうかなんて考えたことなかったな。
もっとも、本業の警察官も「好きか?」と聞かれたら別に好きではない。
やらないといけない使命があるから、やっている。
そんな所だ。
リラと僕は、違う
表舞台で輝く彗星のようなリラと、決して存在を知られてはいけない、偽りだらけの影の存在である僕。
両極端な2人だな…
きっと、この先僕らの進む道が交わることなんて無いんだろう。
そう思うと、どうしてか僕の胸が軋んだ。