【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第36章 ドS男の過去 ☆
「もともと藤は、L-エル-というバンドを結成していたんです。
その頃の時代の藤が作る曲たちは、ラブソングばかりで、ヒット曲を飛ばし続けていました。」
「へぇ!今の藤さんからは想像できない…」
「でしょう?
…藤が、ラブソングを書かなくなったのは、ある事件がきっかけでした。」
「事件…」
「ええ。当時、結婚を間近に控えた婚約者が藤にいたんですが、その女性が藤が所属していたバンドの仲間と…そう言う関係になってしまって。
…藤にとって、そのバンドメンバーは仕事仲間であり、親友と呼べる間柄でした。」
ラブソングをかけなくなるほどの事件ってなんだろう。
そう思っていたけれど、想像していたよりも数倍苦しい事件だった。
「…そんな。それじゃ…」
「最愛の女性と、1番の親友。
同時に2人に裏切られたんです。
そのことで、彼女と親友と大げんか。」
そんな残酷すぎる経験をしたから、そりゃ恋にうつつを抜かすわたしのこと嫌いにもなるよね…
惚れた好いた別れたばかり歌う女って思われても仕方ない。
「それで…その婚約者とは今は…」
「…亡くなったの。その女性。
喧嘩した日、藤のマンションから追い出されたあと、自分で駅のホームから線路に飛び降りて。
…それ以来、藤は愛とか恋とか、信じられなくなって、ラブソングは一切と言っていいほど、書かなくなった。」
「…言葉が、出てこないです…」
「愛をバカにする藤だけど、その愛を一番信じたいのは藤なんです。
Lilaさんとのコラボで、何か変わるかな?と少し期待していたんですが…
そう上手くはいかないみたいですね」
「…なにかわたしにできることは…」
そう話そうとした時、会議室のドアがガチャリと開いた。
部屋の中に入ってきたのは、藤さんだった。