【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第35章 ベテルギウス ☆
「いいよ。もう。
時間がないから。
この後編曲してレコーディングまで日が無い」
「…すみません…」
「とりあえず明後日の打ち合わせまでに俺のソロ楽曲を提供してくれ。」
「ハイ…」
まるで、担任の先生に怒られたような気分だ…
そう思いながら電話を切ってずうんと落ち込むわたし。
情けなさと申し訳なさでいっぱいになりながら、藤さんが作ってくれたわたしのソロ楽曲を試聴した。
が
「なにこの難しい曲…」
メロディが高音から低音まで行ったり来たり
地声とファルセットを切り替えるタイミングが難しく、さらには
「ブレス入れるタイミングがない…」
何度か曲に合わせてハミングしてみたけど、わたしが今まで歌った曲よりずば抜けて難易度が高かった。
こんな難しい曲…
これを、たった3日で作ったの?藤さん…
彼の才能に嫉妬すら覚えてしまう。
それに、これわたしちゃんと歌える?
曲も作らないといけないし、この曲の歌も練習して仕上げないといけない。
かつて、こんなに無謀だと感じたことはあっただろうか…
どうしよう。
そればかり頭に浮かんでは消える。
その時、玄関のドアが開いて零が帰ってきた。
「ただいま」
「うっ…零ー!!どうしようどうしよう
もうだめ…無理だよー!」
「?!」
うわぁあ!と飛びついてきたわたしを、零は優しい腕で受け止めてくれる。
「よしよし。どうした?
曲作り、上手くいかない?」
「うん…そのうえに、わたしに提供された楽曲がめちゃくちゃ難しいの…
どうしよう…時間無いのに…」
うぅ…と零の胸に顔を埋めると、零はわたしの髪を撫でて笑った。
「昨日からずっと家に籠ってるだろ?
ちょっと息抜きにドライブでも行こう」
「え…でも、零疲れてるでしょ?」
「平気。ほら?行こう」
零は優しく笑って、わたしの手を握ると、
そのまま手を引き自宅を後にした。