【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第35章 ベテルギウス ☆
「うーーー!だめ!
全然いいメロディー浮かんで来ない…」
打ち合わせから3日経った。
わたしのスケジュールは曲作りのために2週間ほど空けてくれたから、この期間に何としてでも2曲完成させなきゃ。
1曲は作曲だけだけど、メロディー作った後に藤さんに歌詞をつけて貰わないといけないから、なるべく早く作る必要がある。
もう1曲は藤さんに歌ってもらうもので、藤さんに勢いよく大見得を切った手前、中途半端なものは出せない…
何度もギターとDTMをいじりながら、メロディを作っては削除、作っては削除を繰り返してる。
気付けばもう21時。
朝からなにも食べずにひたすらに音を聴いてるから、だんだん頭が痛くなって来た。
「あぁ…藤さんにあんなこと言わなきゃ良かったなぁ」
早くも、藤 亜蘭に啖呵を切ったことを後悔しながら、必死に頭にメロディーを思い浮かべた。
しかし全くピンとくるものが浮かんでこない。
藤さんのソロ曲も作らないといけないし…
ああ、こんなに曲を作るのが億劫になるのは初めてかもしれない。
そのとき、わたしのスマホが鳴った。
画面表示を見ると、知らない番号からだ。
「はい?もしもし」
「藤だ。」
聞き覚えのあるその声と名前に、わたしはピシ…と固まる。
「ふじ…、あぁ!藤さん!
あの、この間は大変無礼を…」
「あんたのソロ、できたからさっきメールでURL送った。
仮歌も入れてあるから、ダウンロードして修正点あれば連絡してくれ」
「はや…もうできたの?!」
だって、まだ3日しか経っていないのに!
藤さんはさも当然。と言うふうに返事をする。
「あぁ。…あんたは?」
「…すみません…まだ全然…」
「…仕方ないな。
一曲目、作曲はあんた、作詞が俺だったが、逆にしよう。
俺が今日中にメロディライン作るから、あんたは一旦俺のソロを進めろ」
「で、でも…わたしが詞を乗せると…」
ラブソングは歌うの御免だと言っていたのに…
と、言おうとすると、面倒臭そうに藤さんが声を被せる。