【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第35章 ベテルギウス ☆
リラが戻ってくるまでテレビでも見てようとリモコンを押すと、ちょうど夜23時のバラエティトーク番組が写った。
ロックグラスに入れたウイスキーを片手にその番組を流し見していると、いつの間にか髪を乾かし終わって戻ってきたリラが声を上げた。
「何見てるの?」
そう言いながら僕の座るソファーの隣に来て、僕に抱きついてくるリラ。
手にはしっかり、僕が作ったソーダ水が握られている。
「見てないから好きなのに変えていいよ?」
リラの髪を撫でてそう言い、リラがチャンネルを変えようとリモコンを取った瞬間、TV画面に写ったある人物を見てリラの表情が一変する。
「うわぁ…藤さんだ…」
「藤?」
リラの表情は、例えるなら学校で一番厳しい生活指導の先生を街で見かけた時のように、しかめっ面をしている。
TV画面に写っているのは、藤 亜蘭というアーティスト。
そう言えばポアロの女子高生がたまに話してるな。
堀が深い顔立ちにツーブロックの黒髪。
身長は185センチあるらしい。
脚が長くて、声はマイルドで深みがある。
100人に聞いたら、100人ともがイケメンと言いそうなまさにイケメン。
そんな男性を、リラはまるで嫌いな蜘蛛を見るような目で見てる。
「この人が、どうかした?」
「実はね、この人、すっっっっっっっっごく怖いの!!」
「え?」
まるで意味がわからないリラの説明に首を傾げていると、リラは僕の腕の後ろに隠れるようにぎゅっとくっついてTV画面の藤 亜蘭を見た。
「この人と、コラボすることになったんだけど、
わたしのことめちゃくちゃ嫌いみたいで…
今日初顔合わせだったんだけど、すごく厳しいこといっぱい言われた…」
そう言いながら、リラは震えながら僕の腕に顔をうずめた。
「なるほど、それで…」
「わたしのことは良いんだけど、零のことまで言われちゃったから、ついカッとなって…
お茶ぶっかけて帰ってきたの…」
「お茶!?」