【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第35章 ベテルギウス ☆
怖いー!
早く帰って零に慰めてもらいたい…
「じゃあ…わたしが作曲で。」
「あと2曲は…そうだな。
お互いが歌う曲をお互いが提供し合うってのはどうだ?」
「あぁ、コラボっぽい…!」
「テーマは挑戦。
それぞれを大きく成長させるような楽曲を作る。どうだ?」
「賛成です!わたし、楽曲提供したことないからそれ自体がある意味挑戦かも!」
思いがけず、初めての経験ができることにわたしは内心とても嬉しく、どんな曲にしようかなーと頭の中でシミュレーションをする。
藤さんはプロデューサーに向かって宣言した。
「やるからには、ヒットチャート独占してやるんで、まぁ見ていてくださいよ」
「いやぁ!頼もしいな、藤くんは!!」
藤さんの本気モードにプロデューサーもご満悦。
真剣な顔をして企画の内容を組み立てようとしている藤さん。
口は悪いし、無愛想だけど仕事に情熱を持っている人なんだな…
と心の中で見直したのも束の間。
藤さんはまたわたしをギン…と睨んで言った。
「言っておくが、俺は中途半端な楽曲はいらないから。
いつものあんたの曲みたいに、お花畑な歌は歌うつもりない。」
こっっっわ!!!
そこまで言わなくてもいいじゃない…
こんな風に怒られたり厳しいことを面と向かって言われると、結構へこむな…
しかも同業者でライバルのこの人に言われると、ちょっとムッとする。
「さっきから、わたしの何が気に入らないんですか?
協力して良い作品を作りましょうよ…!」
精一杯、怒りを抑えながら大人な対応をして、モヤモヤしているわたしに、藤さんはさらに追い討ちをかけてくる。
「…あんた、前に歌番組で男に公開告白してたよな。
しかも生放送。
俺、プロ意識に欠けるやつ見るとイラつくんだよ。
あんたみたいに、恋愛で脳内いっぱいな女、一番嫌い」
ダンッとわたしを壁に追い込みながら、鋭い目つきで睨む藤さんに圧倒され、わたしは目をぱちくりさせながら彼を見た。