【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第35章 ベテルギウス ☆
1週間後、いよいよコラボ企画の初回打ち合わせがやってきた。
藤さんは29歳だからわたしよりも6個上。
だけどデビューの年はわたしの方が1年早い。
年上だけどわたしの方が先輩というややこしい関係だが、念のため、わたしは藤さんよりも早く現場入りすることにした。
「始めが肝心だからね」
山岸さんにそう言いながら、どうにかこのコラボを成功させたくて、なるべく失礼のないようにしようと心に決めた。
会議室で待っていると、コンコンとドアのノック音が鳴り、藤さんとそのマネージャーが入ってきた。
すかさず、わたしは駆け寄って会釈をしながら挨拶を交わす。
「何度か共演させてもらってますけど、話すのは初めてですよね?
Lilaです。今回は藤さんと良い作品を…」
作りたいと思っています。
と、続くはずだったわたしの挨拶を、藤さんの声が被って遮った。
「あぁ。あんたか。
惚れた、好いた、別れたばっかり歌う女」
藤さんは、黒髪から覗く整った目でわたしを180センチの高さから見下ろした。
そして、気だるそうにため息をつくと、
「ったく…コラボよりソロで新曲出したかったぜ」
そう言いながらポケットに手を入れ、ガタッと向かいの席に座った。
な、なにこのひと!!!?
感じ悪っ!
まさかほぼ初対面の人間に、そんな蔑んだ目で見られるなんて思っても見なかったわたしは、呆気に取られて呆然と藤さんを見た。
「や、山岸さんー!」
「まあまあ。藤くんはクールで有名だから」
「クールじゃなくて、あれは無愛想って言うんです!
一応わたしのほうが1年先輩なのに…」
コソコソと山岸さんに文句を言っていると、会議室に今回の企画のプロデューサーが入って来た。
「おー!Lilaちゃんに藤くん!
今回はよろしくねー!」
わたしたちの険悪なさっきのやり取りを全く知らないプロデューサーは、上機嫌に着席すると早速打ち合わせが始まった。