【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第35章 ベテルギウス ☆
ダイニングテーブルに並べられたのは、野菜がたくさん入ったグラタン。
「お、おいしそう…」
「そう?美味しかったらポアロのメニューに入れようかな」
木のスプーンでグラタンを掬い、ふーふーと少し冷まして口に入れると、ふわっと幸せな味がした。
「んー!美味しい!
天才です。零さん」
「大袈裟だな」
零は本当に料理が上手で、仕事がわたしより早く終わった日はいつも美味しいご飯を作ってくれる。
そこまで思った時、わたしはハッと思い出した。
またしばらく仕事が忙しくなりそうなことを。
「…あ。」
「?どうした?」
「実は、また新しいプロジェクトが走ることになって、しばらく帰るの遅くなると思う。」
申し訳なさそうに下を向くと、零は優しい声をかけながら笑った。
「良かったですね。
好きな歌がまた歌えるようになって。」
「ん…でも、ごめんね?
わたしも零にご飯作ってあげたりしたいんだけど…」
「そんなこと、リラは気にしなくていいんですよ。
寧ろ、料理するより歌っていてください」
そんな優しい零の言葉に存分に甘えているわたし。
なんて優しい人が自分の恋人なんだろう。
零が作ってくれたグラタンをお腹いっぱい食べながら、改めてそう思う。
大好きな歌を仕事に出来て、毎日忙しく充実していて、
家に帰れば世界で一番大好きな人がわたしに笑顔を向けてくれる。
わたしの不幸な生い立ちなんて、もう全部精算されてる気がして、幸せな人生だと思えるようになっている。
仕事も恋も、順調
そう信じて疑わなかった。