【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第5章 背中に触れた時
「…もしもし?」
「あっ!あの、安室さんの携帯ですか?」
電話口から聞こえてきたのは、透き通るようなリラの声。
緊張しているのか、少しだけ声が裏返っている。
初めて、電話をくれたな…
「フッ…はい。安室さんの携帯です」
クスクスと笑いながら、ワザと彼女の言葉に韻を踏んで答えた。
「あの…大変申し訳ございませんが、迎えに来ていただけないでしょうか?」
きっと今、ペコペコとお辞儀しながら言ってるんだろうな。
電話口でもなんとなく分かる。
必要以上に敬語だし。
「…今どこです?」
「今、青山の事務所に…」
「了解。すぐに向かいます。」
ピッと電話を切ると、僕は飲みかけのアイスコーヒーを置いて席を立った。
「降谷さん、何か事件ですか?」
「あぁ。事件かもな?」
風見に意味深に笑ってそう伝えると、僕は早足でカフェを後にし、駐車場に停めてあるRX-7に乗り込んだ。
そして、キーを回してエンジンをかけた時、ふと思い出してスマホを操作する。
着信履歴から、リラの番号を登録した。
Lilaではなく
雨宮リラの名前で。
なんとなく、それが少し嬉しくて
ふと見たバックミラーに僕の緩んだ顔が映った。
「…確かに、緩んでるな」
風見の言う通りで、思わず口元を覆うとアクセルを踏み車を発進させた。