【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第33章 降谷零の右腕になるには ☆
やってしまった…
ふと我に帰ると、怪我人の彼氏を押し倒してとんでもない痴女じゃない!?
と、今更ながら自己嫌悪に陥りつつも、色々あってお腹が空いている自分達のために、わたしはキッチンで簡単な夕食を作った。
食卓に並べて、椅子に座り、零と一緒にいただきますをする。
そして、零が左手で不器用に箸を使うも、上手くものを掴めない。
「そっか。右手使えないんじゃ食べられないね」
「しばらくは不便ですが、仕方ないですね」
そう言う零を見て、わたしはピーンといいことを思いつく。
「じゃあ、わたしが食べさせてあげる!」
「いや、いいですよ。
自分で食べられます」
そう言って左手のお箸で魚の身を取ろうとしては、上手くいかずぽろ…とこぼれ落ちた。
「ほら。大人しくあーんして?」
零のお箸を奪い、代わりに魚の身を取ると、あーんと口元まで持っていく。
零は少しだけ迷った後、大人しくそれをぱく…と口に運んだ。
「零が…か、可愛い…」
「可愛くない」
顔を赤くしてぷいっとそっぽを向く零さん。
可愛い以外の何者でもないでしょ?!
そんな彼がもっと見たくて、わたしはこのあーん。を続けることにした。
「次、何食べたい?
ごはん?それとも、おひたし?
卵焼きもあるよ」
「…たまご」
「可愛い…」
たまご だって!可愛いい…
零の可愛いタイムに悶絶しながら、わたしは箸で卵焼きを掴んで零の口元に持っていく。
するとまた、パクリ。と零がそれを食べた。
「可愛い…」
「…なんか癪ですね」
わたしに可愛い可愛いと言われ慣れていない零は、複雑そうな顔をしつつもわたしのあーん。に付き合ってくれた。