【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第5章 背中に触れた時
雰囲気が可愛くなったってどう言うこと…?
自分では全くその言葉の意味が分からず、わたしは逆にヨーコちゃんに聞いた。
「ヨーコちゃん。あのね」
「はい?」
「…ある特定の人のことを考えると突然心臓がぎゅってなったり、笑った顔をふいに思い出したり…
突然謎の不整脈に襲われたり…
そう言う経験ってわかる?」
「?はい。…恋ですよね?」
「…恋!?」
まさかの単語が飛び出し、わたしは思わず目を見開いた。
恋って……え??恋?!
全然ピンと来なくて、明らかに納得していない顔をしてヨーコちゃんを見ると、ヨーコちゃんは驚いたように言う。
「…リラさん…え、だってついこの間まで俳優さんと付き合ってましたよね?
恋、わかるでしょ?」
「わ、わかるよ??」
強がってそんな風に言ったけど、わかんない。
恋って…こんなに胸が苦しいものなの?
こんなに心臓が忙しいもの?!
もしそうなら、今までわたしがしてきたのは恋じゃなかったということ?
「恋、してるんですね♪リラさん」
ヨーコちゃんがニコニコしながらそう言うのを、わたしはなんとも言えない表情で聞いていた。
恋?わたしが?安室さんに?
ないよね。ありえない。
きっと、珍しく優しくされて、心が麻痺しているだけだ。
今まで付き合った人が酷すぎて、比較して安室さんが素敵に見えているだけだ。
何度もそう自分に言い聞かせていると、雑誌のライターさんが事務所にやってきて、急いで仕事モードに頭を切り替えた。