【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第5章 背中に触れた時
安室さんと一緒に暮らし始めて、1週間が経った。
安室さんは忙しい人で、朝から夜まで家を空けていることが多い。
ポアロの他に、探偵業もやっていると言っていたから、それが相当大変なんだろう。
そして貴重な休みや空き時間でわたしを警護してくれる。
こんなに忙しい人の休みを奪ってしまっていることに罪悪感を感じると、安室さんはすぐに笑って髪を撫でながら言う。
「申し訳ないと思うのは、禁止にしましょう」
変な人。
休みを潰されても怒らないなんて。
そして、笑顔も髪に触れる手も、余す所なく優しい。
初めて会ったとき、笑顔の奥が見えない人だな。と思ったのに、今はその笑顔に癒されてる自分がいる。
完全に洗脳されているんだろうか。
「リラさん!どうですか?
最近、ストーカー…」
雑誌のインタビューがあるため、事務所の会議室で待機していると、ヨーコちゃんが会議室に入ってきた。
「今のところ、実害なしだよ」
「早く捕まるといいですね…」
そう言われて、そうだね。と言おうとしたけれど、一瞬思った。
そうか、ストーカーが捕まったら、わたしはもう安室さんと一緒にいる理由がなくなる。
また赤の他人に戻って、わたしが自分からポアロに会いに行かなければもう2度と会うことはないんだろう。
そう思うと、ほんの少し、寂しい気持ちになった。
「リラさん?どうかしました?」
「え?ううん。なんでも」
「リラさん、最近ちょっと可愛くなりましたね」
「そ、そう??」
「もちろん前から可愛かったんですけど、さらに…雰囲気が可愛らしくなった気が。」