【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第32章 Precious
そんなリラを焦がれるような思いで見つめていると、そんな僕の顔を見て涼宮が言う。
「降谷くんって、わりと真剣に恋愛するタイプだったんだね」
「何です?突然」
「彼女のこと好きすぎるのが全身から伝わってくるの。
…真剣な恋って疲れるだけなのに。」
僕の溺愛っぷりに呆れている様子の涼宮。
そんな彼女に、僕は珍しく嫌味を言う。
「…真剣な恋じゃないんだ?
3人で付き合っているのは」
「違うよ。
警察官ってストレスが普通の仕事の何倍もあるじゃない?
そんな中、深く考えずに欲求不満解消できる相手が欲しかっただけ。
それがたまたま、あの2人だった」
「あの2人はそう思っていないかもしれませんよ?」
「…本気の恋愛なんて、馬鹿馬鹿しいもの」
そう言って涼宮はステージに立つリラを見た。
そのとき、MCが終わり次の歌のタイトルをリラがコールした。
「聴いてください。Precious」
一瞬でファンの声援が止み、会場の全員がバラードを聴く姿勢になるのはもはや軍隊並みの統率力だ。
そして、リラの口から聴き心地のいい音色が流れた。
「…綺麗な声…」
隣で聴いていた涼宮がポツリとそう零す。
「初めてですか?Lilaの歌声を聴くのは」
「ええ。J-popはあまり聴かないから」
「僕はこの歌声に何度も救われてきた。
だから、今度は僕がリラを守って行きたい。
…馬鹿馬鹿しいけど、永遠はあるって信じてしまいそうになる。
そのぐらい、好きだよ。」
涼宮は少し笑った。
「…なに?惚気?
…でもまあ、この歌声を聴いていると降谷くんが特別視するのも頷けるかも」
そんな悪態をついて、涼宮は目を閉じてリラの歌声に耳を傾けた。
天使の歌声のように、心の底から幸せが溢れるような、この歌を。