【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第32章 Precious
安室side
「はい。血の量に対して、傷は思ったより深くなかったからこれでとりあえず大丈夫ですよ。
あとは念のために病院で検査をしてください。
紹介状を書きますから」
「お手数おかけします」
医務室で応急処置をしてもらい、自分の右腕を見る。
大袈裟に包帯を巻かれていて思わず笑ってしまった。
まあでも、リラの事を守った勲章だと思えばいい。
ひとまず心配することはなさそうで、涼宮も安心した様子だ。
「大したことなくて良かったわね」
「あぁ。まあ右手はしばらく使えそうにないですが」
傷は深くはなかったとは言え、動かすと普通に痛い。
しばらくは肩から包帯を巻いたこの状態だろうな…
ポアロのバイト、また休まないと
そう思いながら、僕は医務室を出た。
そして、リラのライブが行われている会場へ急ごうと走り出したとき、涼宮が慌てて僕を追いかけてくる。
「ちょ、どこ行くの?走らない方がいいわよ!」
「リラのライブに。
約束したので」
「…本当に溺愛って感じね。
一緒に行くわ。まだテロ犯が潜んでいるかもしれないし」
ハァッとため息を吐いて、涼宮は僕の隣についてきた。
僕たちがライブ会場に到着した頃、ちょうどMCの時間だった。
ファンからの声援や野次を上手く拾い、会場一体となって湧かせている。
チケットを持たない僕たちは、警備のためという名目で会場の一番後ろからステージを見守る。
ここから見るとステージまでの距離は遠く、リラの表情まで肉眼では見えない。
ステージ横に設置されたスクリーンに映るリラを見ていると、リラが随分と遠い存在に思えて切なくなった。