【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第32章 Precious
犯人に背を向ける状態で、わたしの身体を守るように。
そして右腕にはさっき発砲した弾がかすったのか、血が滲んでいる。
「零…っ血が…!」
「下がって。僕のそばを離れるな」
自分の腕から血が滴っているにも関わらず、零はわたしの身体を守るようにグッと自分の身体の後ろに隠した。
そして零は傷ついた右腕で、その男に容赦なく銃を向けた。
「銃を下ろせ。
さもないと、僕が引き金を引く」
「…ハッタリだ。日本の警察は、容疑者に向けて発砲しない」
「…たしかに。だが公安警察は目的のためなら手段を選ばない。
ここでお前を殺す必要があるのなら、僕は容赦なく射殺する。」
そう言いながら零が引き金に指をかけたとき、廊下の向こうから涼宮さんを始めとする公安警察の仲間が駆けつけてきた。
「警察よ!銃を下ろしなさい」
一対多となったこの状況に、実行犯の男は大人しく銃を床に置き、両手を上げた。
「確保だ」
その零の一言で、捜査員が数人かがりでその男に手錠をかけた。
恐怖でただ見ていることしかできなかったわたしは、ハッと零の腕の傷のことを思い出す。
「零!手当てしないと…」
「っ…そんなことよりリラ…
怪我はない?
ごめんな…怖かっただろ?」
そう言いながら零は傷ついた腕でわたしの身体をぎゅっと抱きしめた。
「っ…わたしのせいで、零が怪我…」
「リラのせいじゃないよ。
それにリラにかすり傷ひとつでも負わせるより、何倍もマシだ。
良かった…無事で。」
「れ…い…こわかっ…た」
零があまりにも優しく髪を撫でるからわたしから思わず本音が漏れ、零はまたわたしを抱きしめ直しながら言う。
「もう大丈夫だから」
零が大丈夫と言って抱きしめてくれるだけで安心する。
それは付き合う前から何も変わってない。