【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第32章 Precious
「Lilaさん。そろそろスタンバイお願いします」
「はーい」
ライブの衣装に着替え、出演まであと2組となった時、スタッフが楽屋まで呼びにきた。
そしてステージ横の控えスペースに移動した時、楽屋に忘れ物をしたことに気づく。
「あ。衣装のグローブ、置いてきちゃった」
今日の衣装的にグローブがないと手首が寂しい。
さっきおにぎりを食べるためにグローブをはずしてそのままだ…
「あぁ。取ってくるよ」
そう言って山岸さんが楽屋に向かおうとするのを、わたしが止める。
「いいよ。自分で行くから。
忘れたのわたしだし、まだ時間もあるから」
「そう?わかった」
そう言って山岸さんを舞台袖の控えスペースに残し、わたしは小走りに楽屋へと向かった。
ちょうど別のステージでチャリティーのテレビ番組が始まったところらしく、楽屋の廊下は先ほどよりもシン…としている。
そして、わたしは何の躊躇もなく、「Lila様」と書かれている自分の楽屋の扉を開けた。
ガラッ
その瞬間、わたしは思わず目を見開いてびくっと身体が跳ねた。
当然、中には誰もいないものと思いきや、そこに見慣れない顔の男性がいたからだ。
楽屋のロッカーに何かを入れているところで、わたしは一瞬スタッフかな?と思ったけれど、次の瞬間、それが間違いだと気付く。
ジャカ…
鈍い音と共にわたしに向けられたのは黒いハンドガン。
予測だにしなかったこの展開に、わたしはただ目を丸くして息を呑んだ。