【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第32章 Precious
私の方が公私共に良いパートナーになれる。
そう言われたことがそっくり体現されていて、さらに焦りが生まれてきた。
「で、公安警察の方が何か?」
わたしたちのやり取りを見ていたメイクさんが、ごもっともな質問をし、零が警察官らしいキリッとした顔で何故ここに来たのかを説明し始めた。
「実は、このチャリティーイベントで何かが起きると言う情報を得まして。
出演者の方の楽屋を回って、注意喚起しているんですよ。
もしも怪しい物を発見しても、絶対に手を触れずに警察に連絡を。」
「何かが起きるって…」
不安そうに眉を顰めたメイクさん。
わたしも山岸さんも、同じ表情をしている。
そこでまた涼宮さんがナイスアシストをした。
「不安に思わなくても大丈夫ですよ。
イベント責任者と話をして、参加客は全員手荷物検査とX線検査をすることになったので。」
「じゃ、じゃあ客に紛れて怪しい人が紛れ込むことはないのね…」
「ええ。ですが万が一怪しい人間がいたら、すぐに通報してください。では。」
そう言って、零はわたしと一度も目を合わさずに部屋を出て行った。
別人という設定だから、仕方ないけど…
涼宮さんには、安室さんも降谷さんも両方の名前をちゃんと伝えているんだ…
そりゃそうだよね。
でも、わたしに教えてくれたのは付き合ってしばらくしてからだった。
緊急事態の時にこんなみっともないヤキモチ焼きたくないのに、わたしの心は嫉妬心が収まる気配すらなかった。