【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第31章 警察官に相応しい彼女 ☆
今週末、休み?と聞いてくることはあっても、どこで何をしている?なんて聞かれたの初めてだ。
「?どうしたの?突然…」
「いいから。答えて?」
「今週末は…土曜はライブのリハーサルをスタジオで。
日曜はチャリティーイベントのライブだけど…」
「…ライブ?」
ぴくりと、零の眉が動いたのを不思議に思いながらも続けた。
「うん。芝浜スタジアムの森林公園でチャリティーイベントがあるの。
ほら、テレビでCMやってるでしょ?
その野外ステージでアーティストが何組かライブするんだけど、それの…」
そこまで説明した時、零はわたしの肩をガッと両手で掴み、ものすごい剣幕で言う。
「駄目だ!行くな!」
「え…行くなって…どういうこと?」
零がどうしてこんなに怖い顔をしているのかも、どうしてこんなに必死に止めに来るのかも、何もわからずにただ首を傾げるわたし。
零は深呼吸して冷静さを取り戻した後、掴んでいたわたしの肩から手を離した。
「…いや。ごめん。
忘れてください…」
「零?」
「ちょっと電話してくるよ」
零はそう言って、スマホを持って立ち上がると、電話をするためにリビングから廊下へ移動した。
「もしもし?涼宮か?」
その冒頭部分だけ、零がドアを開けて出ていく直前にわたしの耳に飛び込んできた。
涼宮って…あの涼宮さん?
温泉の時、零にすごく積極的にアプローチしてて…わたしに、宣戦布告してきたあの…?
どうして?どうして電話をかけてるの…?
たった一言だけでモヤモヤと心の奥がざわつくのを、わたしはただ聞いていた。