【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第30章 ジェラシーの温度 ☆
安室side
朝からリラはすこぶる機嫌が良い。
旅行がよっぽど嬉しかったのか、ふんふんと鼻歌を歌っては僕の方を見て、嬉しそうに笑う。
そんなふうに助手席ではしゃぐ彼女を横目で見て、ああ。今日も相変わらず可愛い…なんて思いながら車を走らせること2時間。
箱根にある目的の旅館へと辿り着いた。
車を駐車場に止め車外に出ると、リラはその建物を見上げながらまた嬉しそうに声を漏らす。
「わあ…立派な建物!」
ラグジュアリーな旅館だけあって、佇まいから厳かな雰囲気だ。
そりゃあ、日本を代表する歌姫を連れてくるんだから、適当な場所をあてがうわけにはいかない。
「じゃあ、行こうか」
そう言って腕を差し出すと、リラは嬉しそうに僕の腕に手を回した。
中に入ると、着物を来た数名の中居さんが出迎えてくれた。
「予約していた安室です」
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。
お手数ですが、こちらでチェックインの手続きをお願いいたします」
そう言われ、カウンターでチェックインの手続きを済ませているとき、隣にいるリラが僕を見て尋ねた。
「安室さんで予約したんだ」
「うん。まあ無いと思うけど、万が一知り合いに会ったときのためにね」
特に、コナンくんを始めとする毛利一家とその周辺人物。
こういうタイミングで会いそうなんだよな…
そしてあの一家に会うと決まって殺人事件が…
と、起こってほしくない未来を想像していると、その予想とは裏腹に僕の呼ばれるはずのない本名を呼ぶ声がした。
「降谷?」
その名前を呼ばれ、驚いて振り返るとそこには僕の警察学校時代の同期が3人揃ってこちらを見ていた。
「大澤!真壁!それに、涼宮…!」
僕はその同期たちをそれぞれ右から順番に名前を呼ぶ。
そんな僕を、伊達メガネをかけたリラが隣で不思議そうに見ていた。