第28章 苦しみのその先に

「で、話とは？」


そう切り出した僕に、山岸さんはあははと笑いながら僕を見た。


「ああ。ウソだよ」

「嘘！？」

「うん。じゃあ今から出発するから。」

「出発！？どこに？！」

「いいからいいから。」


まるで、今日はずっと家にいてねと言った時のリラのようなことを言いながら、山岸さんは車を発進させた。

意味がわからないこの展開に慌てふためく僕。
え？これ、僕もしかして山岸さんに誘拐されてる？！

そんな思っても見なかったことが起こり、必死に頭の中を整理する僕をよそに、車は横浜みなとみらいのメモリアルパークに到着した。


「さあ着いたよ！」

「？ここは？」


車を降りて周りを見渡すと、公園にある野外ステージの前。
周りには、たくさんの人だかりが出来ている。

よく見ると、LilaのライブTシャツを着ている人や、Lilaと書かれたうちわを持っている人、Lilaの過去のライブ衣装のコスプレをしている人

それらを見て僕は勘づいた。


「もしかして…」


山岸さんに答えを聞こうとした時、周りの客達が歓声を上げた。


ハッと見ると、ステージ上にLilaが立っている。
真っ赤なミニドレスに身を包んだリラ。
ステージ上の存在感は相変わらずだ。

立つだけで、ステージが華やかになる。
バックダンサーなんていらないぐらい、たった1人だけで、ステージが狭く見える。