【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第28章 苦しみのその先に
安室side
帰ってきたリラは上機嫌に僕が作ったロールキャベツを口に運ぶ。
歌えることになったのがよっぽど嬉しいんだろう。
隙あらばふんふんと鼻歌を歌うリラは、ニコニコして僕に言った。
「あ、零。
来月の復帰の日、日曜なんだけど家にいてくれない?」
「その日はポアロもないし非番だからいいけど…どうして?」
「いいからいいから」
そう言ってまた上機嫌に夕食を食べ進めた。
きっと、こんな風に2人でご飯を食べる頻度はリラが復帰したら激減するだろう。
それでもいい。
リラが大好きな歌を思う存分歌えるのならそれで。
夕食の後、2人で片付けを終えた時、ちょうど風呂が沸いた音がした。
「あ、零。お風呂先に入る?
わたしは先でも後でもどっちでもいいよ?」
「…一緒に入りたい」
「ふえっ!?!」
一緒に入ると言う選択肢は一切無かった様子のリラは、僕の提案を聞いて間抜けな声を出した。
「…ダメ?
こっちの家に来てから一度も入ってないし。
なんなら、前の家引っ越す最後に入った一度きりだし?」
じっとリラの目を見つめながら首を傾げると、リラはうーんと考えた後、逆に僕の目を見つめ返しながら言う。
「何もしない?」
「…してほしくない?」
内心少し傷つきながらリラに問うと、リラはかあっと顔を赤くしながら言う。
「…だって、今日はベッドでしたくて…」
その表情が可愛すぎて、ギュンッと心を掴まれながらも、僕は余裕ぶってリラの頭を撫でた。
「わかった。何もしない。
抱きしめるだけ」
「…じゃあ、入る」
ぎゅっと僕の腕を掴みながらそう言われると、一瞬で約束を破りそうになる。
危ない。
抱きしめるだけ。抱きしめるだけ…
そう頭の中で繰り返しながら僕はリラと一緒にバスルームへと向かった。