【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第28章 苦しみのその先に
安室side
「よし。美味しそうにできた」
自宅でキッチンに立つ僕は、鍋で煮込んだロールキャベツを見て満足げに微笑むとコンロの火を止めた。
時間は21時。
少し遅めの夕食だがもうすぐ帰ってくると連絡があったリラに合わせて作ったので仕方ない。
復帰が決まってから、リラは毎日打ち合わせや準備に忙しそうだ。
きっと復帰したらもっと忙しくなるんだろうな。
歌声を失っていた数ヶ月間は、いわば神様がくれた夏休みのようなものだったのかもしれない。
ロールキャベツをさらに盛り付けながらそんなことを考えていると、僕の降谷零のスマホが鳴った。
リラか?
そう予想して素早くスマホを取り、表示された名前も見ずに勝手にリラだと思い、電話に出た。
「もしもし、リラ?」
「降谷さん!!!!!」
受話器から聞こえてきた大音量の僕の名前に、キーンと耳をやられながら、その大声の主に返事をする。
「風見か…うるさいな」
「ああっ!すみません!」
「何だ?何かあったのか?」
「おめでとうございます!!
Lilaさん、復帰されるんですよね!」
「あぁ。そのことか。
まあそうだな」
「これからも応援していますとお伝えください!!
それにしても降谷さん、リラさんからの電話に出る時はいつもより声が1オクターブ高いんですね!」
プツッ
風見にものすごく恥ずかしいことをどストレートに言われ、僕は最後まで聞かずに風見の電話を切った。
…まったく。
別に1オクターブも高くないだろ…
そう口を尖らせてポイっとスマホをソファーに投げたとき、またそのスマホが鳴る。