【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第28章 苦しみのその先に
RX-7に乗り込んだ時、わたしは零に伝えていなかったことを思い出した。
「…零」
「なに?」
ん?と首を傾げてわたしを見つめる愛しい彼に、わたしは精一杯の感謝を伝える。
「ありがとう。
また零に助けられたね」
「君が、自分で乗り越えたんですよ」
そんなこと言ってくれるけれど、わたし1人じゃ乗り越えられなかったよ?
零と出会ってから、零に助けられてばかりだ。
ストーカーのことだってそう。
零のことを歌った曲ができたことも
歌えなくて絶望しているときも
今回の過去のわだかまりも
「全部零がいたから、乗り越えられたんだよ。」
「…じゃあ、お礼を貰おうかな」
「うん!何でも言って?何が欲し…
ちゅ…
珍しくわたしの言葉を最後まで聞かずに、零が唇を重ねた。
「お礼のキス、いただきました」
「…キスだけでいいの?」
「……そんな顔しないで。
今すぐ抱きたくなる…」
耳元で、零の甘い声がした。
どくんと心臓が簡単に跳ね、思わずいいよって言ってしまいそうになったけれどここは空港の駐車場。
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と言う見出しの記事が即座に脳裏に浮かび、わたしはブルブルと首を振った。
「帰ろう!はやく!帰ってしよ!?」
「はいはい。
じゃあ、シートベルトして?」
そう言われ、大人しくシートベルトをしたわたしを確認し、車が動き出した。
高速道路を走っていると、いつのまにか夕陽が海に沈む時間になっていた。
「…お母さん、もう離陸したかな」
「うん。もう空の上だな」
イギリスに帰る母の姿を思い出し、わたしの頭に母がよく歌ってくれた子守唄が降りてきた。
わたしは、それを徐に口ずさんだ。
「ド ド ソ ソ ラ ラ ソ〜♪」
きらきら星を音階で歌っていると、高速道路を運転中だった零が、急に待避所に車を停めた。
キキッ