【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第27章 母と娘
そして、次のページからは白紙。
日記の最後のページには家族写真が挟んであった。
まだ幸せだったころに撮影した、4人の写真。
母が亡くなって以来、母の写真を見ることすら避けてきたわたしは、15年ぶりに母の姿を見た。
母の顔は、今のわたしによく似ていた。
あぁ。わたしって母親似だったんだ。
昔は気づかなかったな。
そう思ったとき、わたしの目から涙がこぼれた。
「ほんとは、ずっと後悔してた…っ」
ぽろぽろと涙が勝手に溢れてくる。
今まで、押し込めてきた感情が全部溢れ出しているみたいに。
「あの日、こんな家族消えちゃえばいいって言ったこと。
きっと、母の最後の引き金を引いたのは、わたし…」
わたしが取り乱したように泣くと、零はわたしを優しくぎゅっと抱きしめてくれた。
零の匂いが心地よくて、わたしは必死に零にしがみつきながら、感情を剥き出しにする。
「本当は、生きていてほしかった…
家族が幸せになれる道を探したかった。
ひとりぼっちになんて、なりたくなかったんだよ…」
あの日、警察に呼ばれて駆けつけた霊安室で、家族3人が死んでいるのを見たとき思った。
これが夢だったらいいのにって。
本当は、消えてほしくなかった。
あんな家族でも、わたしの居場所だと思っていたから。
そんなわたしの居場所を奪った母が憎かった。
憎かったのに…
母の孤独に気付いてあげられなかった。
そのことすら今まで気づきもしなかった。
「今まで、ひとりにしてごめんね…」
母の墓石に向かって、思わずその言葉と涙がこぼれた。