【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第4章 君の近くに
今まで付き合った人は全員、向こうから告白してきた。
特に嫌じゃなかったし、付き合ってみるのもいいかも。というノリでOKしていた気がする。
付き合っている時は、もちろんときめいたりもした。
好きと言えたし、キスだってできた。
なのに、夢中になれなかった。
キス以上は誰ともしてない。
そして最後には決まって、
俺のこと好きじゃないだろ?
そう言って振られる。
それなのに、恋の歌を書くんだから、おかしいよね。
説得力もない。
ただ、話題性だけがわたしの音楽の唯一の取り柄なのかもしれない。
こんなんじゃ、きっとそのうち世間からも飽きられちゃうね…
レコーディングの前に突然ネガティブなことを考え始め、わたしはハッとして顔をぺちぺち叩いた。
だめだめ。
今日は夜までレコーディングなんだから、気合入れないと。
そんなわたしを見て、安室さんはふっと笑う。
「えっ、なに?」
「いえ?クールだと思っていたけど、そうじゃないんだなーと思って」
「く、クールだよ?わたし」
「自分からクールって言う時点で違いますよ。
あ、ほら、スタジオに到着しましたよ。
車停めますね」
安室さんの方が一枚上手で、わたしはぐ…とそれ以上言い返すのを我慢した。
片手でハンドルを回しながら、綺麗に車を停めた安室さんは、運転席シートのリクライニングを少し倒しながら言う。
「じゃあ、僕はここで待っているので」
さすがに、夜まで車の中で1人待たせるわけには…
そう思ったわたしは咄嗟に安室さんの手を取った。
「安室さんも一緒に行こ?」
「いや…でも、関係者じゃ…」
「…わたしのボディーガードでしょ?関係者だよ!」
そんな無茶苦茶な理屈で、わたしは安室さんの手を引いてレコーディングスタジオへと向かった。