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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第27章 母と娘




義母とは言え、最愛の彼女の今の母親だ。
嘘をつく気には到底なれなかった。


「そう?
まあ、警察官ならそう言うことはあるわよね。
MI6だって、偽名を名乗るのは当然だし」


何とも理解のいい母親だな…
さすが弁護士といった頭の回転の速さだ。

でもそれなら、あんなことをリラに言えば、さっきのように取り乱すのも読めるはずだが…

そう思っていると、僕の心を読んだのか、静かに話し出した。


「あの子ね、私の前で泣いたこと一度もないの。」

「え…?」

「うちの子になってから、ずっと優等生で自分のことは全部きっちり自分でやっていたわ。
ああ、この子は大丈夫。強いから。
そう思ってたけど…」


リラの義母は移りゆく窓の外を景色を見ながら続けた。


「そんなことなかったのよね。
今回のことで、山岸さんから電話をもらうまで、気付かなかった。
影で1人で泣いてたんだなって。」


その話を聞いて、僕はリラと付き合った日のことを思い出した。

あのとき僕は、初めて涙を見せてくれたリラに、やっと泣き顔を見せてくれましたね。と言った。

このお母さんも同じことを思っていたのか。
それも、僕よりもずっと長い時間。


そう思っていると、リラの母は続けてリラの実の母親について話し出した。


「あの子の実の母親は、私の姉。
あの子は、姉のことを心底恨んでいるけれど、姉も苦しんでいたのよ。
あの子の人に弱さを見せられないところは、実の母親譲りだわ。
…お墓参りに誘ったのは、ちゃんと過去と向き合って、消化して欲しかったから。」


「…リラを、僕が連れていくと言うべきなんでしょうけど…すみません。
僕はリラが1番大事です。
リラがしたくないことは、させたくない。
そう思ってしまいます」


僕はリラが1番大切で、リラが嫌がることは絶対にしたくないしさせたくない。

だから、リラが行きたくないならそれを尊重してあげたい。


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