【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第27章 母と娘
リビングに僕とリラの義母が取り残され、シンとした気まずい静寂が肌を刺す。
どうしたものか…そう思っていると、リラの義母はふぅ…とため息を付いた後僕を見た。
「…ごめんなさいね。安室さん。
居心地悪かったでしょ?
…仕方ないから、諦めてホテルまで帰るわ」
「…ホテルまで車で送ります」
「いいのよ、タクシー拾うから」
「いや、送ります。
送らせてください」
真剣にそう言う僕の顔を見て、リラの母は少し考えた後
「そう?…じゃあ、お願いしようかしら」
そう言って微笑んだ。
マンションの駐車場に停めてあるRX-7まで2人で向かい、助手席にリラの母を乗せると、何だか妙に緊張してきた。
「お泊まりは、どこのホテルですか?」
「ベルツリーホテルなの」
「あぁ。了解です」
行き先を聞いて、ベルツリーホテルに向かって僕は車を発進させた。
リラの義母は、助手席で手帳とスマホを開き、仕事の予定の調整を始めた。
時折電話がかかってきてクライアントとやり取りをすることもあった。
しばらく走っていると、リラの母が話しかけてきてくれた。
「仕事ばかりしていたから、あの子に全然構ってあげられなかったの。
昔から。」
「敏腕弁護士だそうですね。
お忙しいでしょう」
「それなりにね。安室さんは、お仕事はなにを?」
「僕は……、すみません。」
「?」
突然謝られた彼女は、目を丸くして首を傾げた。
「安室透は、偽名なんです。
本名は降谷零。職業は警察官です。
もちろん、リラさんにはそれを伝えていますが…
訳あって、外では偽名を呼ぶようにお願いしていて。」