【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第26章 謎に包まれた黒の話 ☆
「よかった…迎えに行くよ。
そこの住所教えて?」
「あ…ちょっとまって。
ヨーコちゃん、ここの住所教えても大丈夫?」
「ええ。リラさんの彼氏さんなら、問題ないですよ」
ヨーコちゃんのお言葉に甘え、わたしは今いる場所の住所を零に伝えた。
「今から車で迎えに行くよ。」
「うん。エントランスで待ってる」
そう言うと、零との電話はプツ…と切れた。
「ヨーコちゃん、ごめんね?
なんかものすごくお騒がせして…」
「何言ってるんですか!私とリラさんの仲でしょ?」
ヨーコちゃんは、女神なの?
そう思うぐらい、寛大な心と温かい笑顔でわたしを見送ってくれた。
ヨーコちゃんのマンションのエントランス前のベンチに座って待っていると、遠くの方から聞き慣れたエンジン音がした。
「零だ…」
音を聞いただけで、RX-7だとわかる。
ぱっと顔をあげると、零が車を停めてこちらに駆け寄ってきた。
「リラ!」
わたしの名前を呼ぶやいなや、わたしを思いっきり腕の中に閉じ込める零。
マンション前の道を歩いている人たちが、怪訝な顔をしてわたし達を見ていた。
「零…みんな見てる…」
「どうだっていい。そんなの。
…リラ。会いたかった」
「そんな、たった数時間だよ?」
「数時間が、何年にも思えた。
リラと気持ちがすれ違ってる時間は、1分だって長く感じる」
苦しそうにそう言った零は、わたしの身体を折れそうなぐらい強く抱きしめる。
そしてわたしの髪を撫でながら言った。
「…車で、話そうか」
「ううん。帰ってからでいいよ。
零のこと、信じることにしたから」
とにかく早くわたしの不安を取り除こうとしてくれる零。
そんな零に、わたしは帰って落ち着いてから話そうと提案した。