【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第26章 謎に包まれた黒の話 ☆
「…はい」
「リラ?今どこ?」
受話器から零の優しい声がする。
それだけで泣きそうになるのをグッと堪えた。
「…ヨーコちゃんの家だけど…」
「良かった…ちゃんと無事に着けたんだな。
リラに何かあったらと思うと心配で。」
そう言ってホッとしたような声を出す零。
そんな声出さないでよ…
わたしがものすごく悪いことをしているみたいな気分になる。
何で返せば良いかわからず黙っていると、零が続けて言う。
「リラ…帰っておいで?
一緒にご飯食べよう。
…ちゃんと、全部正直に包み隠さず話すから」
「え…」
「手帳に挟んでいた写真を見たよ。
…不安にさせてごめん。
会って説明したい」
「…」
説明させて欲しいって、それはホテルの部屋に入ったのは事実だけど、それ以降何もしてないってこと?
零の言葉の真意がつかめずに戸惑っていると、零はわたしに絞り出すような苦しそうな声で言った。
「頼むから…僕のところに帰ってきて…」
こんなに、つらそうな零の声は初めてだった。
わたしのことを、必要としてくれているんだと、声を聞くだけで感じ取ることができた。
そんな零が、浮気なんてするはずないよね…
わたし、なんで疑っちゃったんだろう。
「わかった。…帰る」
わたしがそう言うと、隣にいたヨーコちゃんも嬉しそうに微笑んだ。