【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第26章 謎に包まれた黒の話 ☆
約束もしてないのに、わたしはヨーコちゃんの家にやってきた。
思えばめちゃくちゃ迷惑じゃない?
彼氏と喧嘩したから泊めて欲しいなんて、大学生じゃないんだから!
エントランスまで来て、突然冷静になり自分のツッコミを入れるも、かと言って他に行くところもない。
帰る場所は零のところだけ。
自分の人望の無さに呆れながらも、わたしはヨーコちゃんの部屋番号でインターホンを鳴らした。
「はいー?」
「あ、ヨーコちゃん?
…あの、ほんっとに申し訳ないんだけど、今ちょっといい?」
「?リラさん?
いいですよー!開けますね」
オートロックが開き、中に入るとヨーコちゃんの部屋を目指す。
手土産を買う余裕もなくおしかけるわたしは相当迷惑な女だ。
しかもヨーコちゃん、生放送終わりだよね…?きっと…
そう思うとさらに申し訳なさが倍増する。
自宅前について迷った挙句結局インターフォンを押したわたし。
ヨーコちゃんが驚いた様子で玄関ドアを開けた。
「リラさん!どうしたんですか?」
「あの…ヨーコちゃん。
その…本当に申し訳ないんだけど、今晩泊めてくれないかな?」
「?いいですけど…まだ終電ありますよね?
お財布落として帰れなくなったとか?
なら、お金貸しますよ?
何なら、タクシー呼びましょうか?」
「そ、そうじゃないの。
彼と喧嘩しちゃって…
というかわたしが一方的に拗ねて逃げてきちゃった…
っ…もう、完璧に嫌われたかも…」
そこまで説明すると、喉の奥が詰まった。
それ以上話したら泣いてしまう気がして、わたしはそのまま黙り込む。
そんなわたしを見て、ヨーコちゃんが天使のように微笑む。
「…どうぞ?ちょうど寝る前のティータイムをするところだったんです。」
そう言ってわたしが入れるように玄関ドアを大きく開け、わたしはお言葉に甘えて中に足を踏み入れた。