【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第26章 謎に包まれた黒の話 ☆
零は目を丸くしてわたしの方を見た後、すぐにまたいつもの笑顔で笑う。
「何?話してないことなんてないですよ?」
まただ。
こうして零に一線をひかれるのは、もう何度目だろう。
出会ってから、この笑顔は何度も見たことがある。
初めて零に出会ったときも思ったんだよ?
笑顔の奥が見えない人だなって。
もう付き合って暫く経つし、こんなにも長い時間零と一緒にいるのに、まだその笑顔で壁を作るんだ…
そう思うと、悲しくて寂しくて仕方なくなる。
「…ごめん。今日わたし、ヨーコちゃんの家でお泊まりなの忘れてた!」
「え?こんな時間から?」
嘘にしか思えないような言い訳をしてその場を立ち上がったわたしは、バッグに適当に荷物を詰める。
「リラ。こんな時間に外に出るの危ないですよ。
…本当に約束があるなら僕が車を」
「いい。タクシーで行くから」
どう考えても今の態度はわたしが悪いとわかる。
だけど、これ以上一緒にいて、これ以上はぐらかされたらもうどんな顔して良いのかわからない。
わたしには、あの写真が真実かどうかを確かめる勇気がなかったんだ。
浮かない顔のまま、零がわたしのことをすごく心配してくれているのをわかっていながら、
わたしは逃げるように2人の家を飛び出した。