【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第25章 わたしのじゃ無い良い匂い
安室side
「高級な香水の匂いがする」
そう言われ、僕は咄嗟にリラから身体を離し、気のせいですよ。なんてはぐらかしてバスルームに入った。
僕についたベルモットの匂いを早く洗い流したい。
そう思ったけれど、よく考えてみればまるでやましいことをしたみたいじゃないか。
リラを裏切るようなことは一切していないのに、僕がこんなふうに必死に隠そうとすると逆に怪しいな…
そんな簡単なことすらわからなくなるほど、僕はリラに相当嫌われたくないらしい。
自分に呆れながらバスルームを出ると、髪を拭きながらキッチンに向かった。
「もうすぐできるよ。
あ、ご飯と一緒にお酒でも飲む?ビール買ってあるけど」
「…ん。大丈夫です。
外で少しだけ飲んできたから」
「そうなの?どこで?」
「ベルツリーホテルにあるバーで」
そこまで言った後、「誰と?」と聞かれるんじゃないかと内心少し焦っていただが、リラはそれ以上は深くつっこまずにダイニングテーブルに食事の準備をしてくれた。
着席し、箸つけて料理を口に運ぼうとするとき、リラがじーーっと僕の方を見てくる。
「…そんなに見られると、食べ辛いな」
「そ、そうだよね、ごめん!
…ちゃんと美味しいか気になって」
そう言って恥ずかしそうに下を向くリラが可愛くて、僕は笑いながら言う。
「今まで食べた中で一番美味しいよ」
「ほんと??よかった!」
嬉しそうに目を細めるリラ。
そんなリラに僕は真剣な顔をして言った。
「リラ」
「ん?」
「もしも、知らない人に声をかけられても絶対着いて行かないように」
突然そんなことを言い出す僕に、リラは一瞬目を見開いた後、ふふっと笑った。
「わたしのこと、何歳だと思ってるの?」
「…僕の、世界で一番大切なひとだから。
危なくなったら、すぐに僕に着信飛ばして?
飛んでいくから」
「…付き合う前にも、そう言ってくれたことあったよね。
…わたし以外に言わないでね?」
「言わないよ。リラだけだ」
僕は何の嘘もなくそう言った。
リラのことが一番大切なんだ。
自分の幸せよりも
自分の命よりも。