【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第25章 わたしのじゃ無い良い匂い
不意に、零からいつも香らない匂いがした気がして、思わず零を見た。
「ん?どうした?」
「…なんか、いい匂いするね」
「え…?」
「や、零はいつもすっごくいい匂いなんだけど、いつもとは違って、高級な香水の匂いがしたような」
そう言うと、零はふっとわたしから身体を離した。
そして、いつもみたいにふわりと笑いながらわたしの髪を撫でる。
「気のせいですよ。
…お腹すいたな。今日の夕食は?」
「あ…牛カツレツだよ。今から焼くね?」
「じゃあ僕はその間にシャワーでも浴びてこようかな。」
そう言ってわたしの頬にキスをした後、零はささっとバスルームへと向かった。
なんか…上手に何かをはぐらかされたような、そんな気がした。
「…でもまあ、気のせいか」
あまり何事も深く考えないタイプのわたし。
ストーカー事件のときも、ヨーコちゃんに言われるまでは相談すらしなかったくらいだ。
今回も、そんなふうに楽観的に考えながら、零に美味しいカツレツを作ってあげようと上機嫌でキッチンに立った。
その時
〜♪
わたしのスマホの着信音が鳴った。
誰だ?と思いながら表示画面を見ると、山岸さんからのようだ。
「もしもし?どうしたの、山岸さん」
「Lila…話があるんだ。
明日、昼過ぎに時間もらってもいいか?」
「うん。いいよ?
…もしかして、わたしの今後の話?」
「…会ってから話すよ。
明日14時に事務所のそばのカフェで待ち合わせしよう。
じゃあ、おやすみ」
「うん。おやすみなさい…」
なんだかものすごく深刻そうな声だったな…山岸さん。
まさか、副社長にLilaを引退させなさい!なんて言われてたりして…
なんて、いろんな予想を頭の中で巡らせながら零のご飯の準備をしていると、零が髪を拭きながら戻ってきた。