【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第25章 わたしのじゃ無い良い匂い
今日の夕飯は牛カツレツにした。
零は帰宅が夜遅くなると言ったから、零の分は帰ってきてから揚げてあげよう。
そう思い、下準備を済ませると自分が食べる分だけ揚げていく。
揚げ物を家で調理するのも初めてかも…
料理って結構奥が深くて面白いな。
わたしはいつも、低糖質にこだわり、オートミールや糖質ゼロ麺、赤身肉、ささみなど万年ダイエッターみたいな料理しかしてこなかったから新鮮だ。
調理が終わり、テーブルに並べて着席すると、いただきますをしてそれを食べる。
揚げ方、もう少しこんがり揚げた方が美味しいかな…
なんて、零に作ってあげるのが本番だから、自分で食べて修正点を分析しながらあっという間に完食。
洗い物を終え、一息ついたときに思った。
「普通の人って、一体どうやって時間を過ごしてるの?!」
時計はまだ19時。
19時から零が帰ってくるまで、一体何をして過ごせばいいのやら…
活動休止してから昨日までは、引っ越しの準備や手配でバタバタしていたからわからなかったけど、暇だ。明らかに。
テレビを見たら、きっと歌いたいのに歌えないストレスが倍増するからな…
でも歌の練習も出来ないし、作曲もダメ。
トレーニングもしちゃダメって言われてるし。
ほんと、わたしから歌を取ったらただのダメ人間だな…
そう思いながら、わたしは山岸さんに電話をかける。
「もしもし?Lilaどうした?」
「山岸さん、今どこ?」
「今?ちょうど新宿あたりを車で走ってるけど」
「…暇で仕方ないの…
暇つぶしの道具、何か買ってきてー!!」
「ええっ!今から!?」
「お願い!今まで仕事ばっかりしてきたから、いざ時間たくさん出来ても何して過ごせばいいのか全然わかんない!!」
時たま発せられる、わたしの芸能人らしいワガママに、忙しい山岸さんは困ったようにため息をつきながらも
「分かったよ。
適当に買って、家まで届ける。待ってて」
と言って了承。
マネージャーの鏡だわ。と思いながら、わたしは電話を切った。