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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第25章 わたしのじゃ無い良い匂い




朝ごはんを作って、お弁当を持たせて、
行ってきますのキスをもらって、零がお仕事に行くのを見送った。

これまでも何度か、零を朝見送ることはあったけれど、今日は今までとはちょっと違って、なんて言うか…新婚さんみたいな気分だった。


さて、今日は掃除と洗濯を終わらせて、夕食の材料を買いにちょっと遠いスーパーまで歩いて行こうかな。

朝食に使った食器や調理器具の洗い物をしながらTVのスイッチをオンにすると、ちょうど朝のワイドショーがやっていた。


「歌手のLilaさんが体調不良を訴え、無期限の活動休止を決めました。」


アナウンサーが読み上げる無機質なそのニュースに、一瞬他人のことだと思ってしまうほどだ。

わたしのことだ!と理解するのに数秒かかったあと、わたしは洗い物をしながら目線をテレビに向けた。

過去の映像と共に、こんなニュース文が読まれてる。

==
歌手のLilaさんが体調不良のため、活動を無期限休止すると事務所が発表しました。
なお、具体的な病名等は明かされておりませんが、命に関わるような病気ではないとのことです。
このニュースに街の人は…


「TVで見れなくなるのは寂しいけど、ゆっくり休んでまた戻ってきてほしいですね」

「なんか、あの記事が出た瞬間活動休止だから。
やっぱあれはガチだったってことすかね?」

「15歳からずっと活動されてたんで、
これを機に普通の生活を満喫してほしいです
また歌声が聞ける日を待ってます」



==

「普通の生活か…」


TVを見ながら、ふと洗い物をする手が止まりぽつりとそう溢した。

さっき、自分でも何度か言ったの。


「普通の朝食」

「普通の生活」

「普通の朝」


普通の…
これが普通なら、じゃあわたしの今までの生活は普通じゃなかったってことか。

15歳から8年間、正しいと信じて疑わなかった自分の生活が、客観的に見ると普通じゃないことに今更気づいた。


このまま、「普通の生活」を送る方が
もしかしたらいいのかもしれないな。

零のそばで、普通の女の子として

普通の生活を…

そう思いながら、テレビでコメンテーターがわたしの休止理由についてあれこれ話してるのを、上の空で聞いていた。


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