【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第25章 わたしのじゃ無い良い匂い
その顔が可愛くて、真剣に話しているのに何故か笑ってしまう。
「ふ…大丈夫だよ。
夜はちょっと遅くなるけど…夕食は帰宅してから食べるから、用意しておいてもらえると嬉しいかな」
「うん!任せて?
わたし、事務所からお休み中は糖質制限もやめて普通の生活しなさいって言われてるから、今日は普通の夕食作るよ!」
「楽しみだな。」
なんて、まるで新婚夫婦のような会話をしながら朝食に箸をつけて口へ運ぶ。
あっという間に完食した僕は、身支度を整え、スーツに着替えた。
そして仕上げのネクタイはリラが締めてくれる。
今日は長丁場だけど、朝からこんなに幸せな時間を過ごせたんだ。
きっといい一日になるはず。
そう思いながら、玄関のドアノブに手をかけたとき、
「あ、零。待って!」
「ん?」
「これ…もし良かったら、お昼に食べて?」
そう言ってリラが差し出してきたのは、保冷バッグ。
「…おにぎりと、お弁当作ったの。
あ、でも付き合いとかあるだろうし、食べなかったら捨てても……っん…」
そこまで言おうとするリラの口を、僕は咄嗟にキスで塞いだ。
ゆっくりと唇を離すと、リラの頬が赤くなっているのが見える。
「いけないこと言う口は塞いでしまいますよ?」
「…ご、ごめん。
食べ物捨てるとか、倫理的にダメだよね」
「いや、そうだけどそうじゃなくて!」
「?」
「…リラが作ってくれたお弁当、僕が捨てると思いますか?」
リラの髪を撫でながらそう聞くと、リラはぶんぶんと顔を横に振った。