【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第25章 わたしのじゃ無い良い匂い
リラが作る料理は基本的にはローカロリーの低糖質なラインナップが多かった。
けれど、こんなふうにごく普通の朝食が並ぶと、あぁ本当にLilaはお休み中なんだな…と実感する。
それと同時に、少し嬉しいと思ってしまった。
僕とリラが選んだ新居で、リラがまるで僕の奥さんみたいにエプロンをつけて、朝ごはんの匂いで起こしてくれたことが。
「リラ…」
思わずリラの身体をぎゅっと抱きしめると、驚いたように僕の名前を呼びながらも、抱きしめ返してくれるリラ。
「?どうしたんですか?零さん」
僕の真似をしてワザと敬語で笑いかけてくるリラ。
愛しいな…
そう思った。
「朝ごはん、作ってくれてありがとう。
ありがたくいただくよ」
ぽんぽんと髪を撫でると、僕はダイニングテーブルに着席した。
並んでこんな風に朝食を食べるのはいつぶりだろう。
リラは忙しい時は朝から夜まで家を空けることもしばしばあった。
帰ってきてかろうじてメイクを落とすと倒れるように眠り、次の日の朝慌ててシャワーを浴びて仕事に行く。
そんな生活から一変、時間が随分ゆっくりと流れている気がした。
「零は今日はお仕事何時まで?」
「今日は午前中は公安のデスクで報告資料の作成。
午後からは依頼人に会って、
…それと、夜はヤバめの組織への潜入捜査」
「ヤバめ…どれぐらいヤバいの?」
「うーん…リラには絶対関わらせたくないぐらいかな。」
「それ、めちゃくちゃ心配なんだけど」
そう言って眉をハの字にして心配そうに僕を見てくるリラ。