【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第24章 この部屋で最後に ☆
「…そう言えばその写真の女性、今より少し若いので気付きませんでしたが、日本のシンガーですよ」
さっき咄嗟に知らないと言ったリラの存在を、あえて認めて話した。
「へぇ?じゃあ見つけるのは容易いわね」
「けれど、多分ただスコッチが彼女のファンだったというだけだと思いますよ?
一度、スコッチと飲んだ時にそう言う話をしていた記憶があります。
第一、もしその女性がスコッチと親しい間柄なら、写真を忘れるなんてヘマしませんよ」
どうだ…?
辻褄は合っているはずだ。
ある種、リラが芸能人で良かったのかもしれない。
複雑な心境のまま、ベルモットの返答を待った。
正直運転どころじゃない僕は、焦っていることを悟られないように、いつも以上に慎重に車を転がした。
ベルモットは少し考えた後、持っていたタバコをリラの写真に押し当てた。
ちょうど、リラの顔の部分を焦がすように。
「そう。じゃあ関係なさそうね。
脳のメモリを無駄に使わないために、燃やしておくわ」
そう言ってリラの写真をタバコで焦がしたベルモットは、そのまま写真を助手席の窓から外へと捨てた。
良かった…
ベルモットは写真を一度見ただけだ。
しばらくするときっと写真のリラの顔は忘れるだろう。
ホッと胸を撫で下ろしながら、僕はベルモットの宿泊するホテルへと車を急がせた。
「で、ジンからの指令とは?」
「あぁ。大したことじゃないのよ」
そう言いながら、ベルモットはジンからの仕事の話を始めた。