【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第24章 この部屋で最後に ☆
すると、10分ほど電話をした零がリビングに戻ってくるやいなや、申し訳無さそうにわたしに言った。
「ごめんリラ…仕事でちょっと今から出ないといけなくなった」
「え…」
「本当にごめん。
荷物の片付けはできるところまでで良いから。
帰るとき、電話するよ」
「うん。仕事だから仕方ないね」
本当は、一緒に楽しくおしゃべりしながら片付けをしたかったな…
なんて、あくまでも零の重荷になりたくないわたしは、気にしていないふりをして笑った。
零は本当に急いでいる様子で、ソファーに掛けてあった上着を取ると、大急ぎで玄関に向かう。
せめてお見送りをしようと、わたしはその後を小走りでついていった。
「じゃあ、行ってきます」
「うん。あ、零!」
「ん?」
「…気をつけてね」
「うん。戸締まりしっかりと頼みますよ」
そう言うと、零は滞在時間たったの20分で新居から仕事に向かった。
さっき呼び止めたのは、行ってきますのキスをしたかったから。
素直に、キスして?って言えば良かったのに、そんな勇気も出せずに零が出ていったドアをしばらくボーッと眺めた。
「…片付けしよう」
広い広い家に一人になったわたしは、しゅんと肩を落としてまた片付けを再開した。