【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第4章 君の近くに
「わたし、足遅いから、我慢できなかったら置いてっていいからね?」
「僕も、ゆっくり走るのが好きですよ?」
走りながら、足手まといにならないようにそう伝えたわたしに、安室さんは輪をかけた優しさでそんなことを言う。
いつもと同じ時間のランニングなのに、なんだか今日は身体が軽く思える。
なんでだろう…
そう思ってると、安室さんがわたしの横で走りながら笑った。
「どうしてか、今日は身体が軽い気がしますよ」
「わたしも!わたしもそう思ってたの」
また、同じ時間に一緒のことを考えていたことがわかって、なぜか心が踊った。
なんだろう。この気持ち。
安室さんと同じこと考えていたのが、なんだかとても…嬉しい。
初めて感じるこの心の変化に戸惑いながらも、
1.5キロほど走った先の公園で一度休憩することにした。
ベンチに腰掛けて汗を拭いていると、安室さんが自販機で水を買って手渡してくれる。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
遠慮しがちにペットボトルを受け取り、キャップを開けようとするけどわたしの非力な力じゃ開けられない。
んーー!っと力を込めて回そうとするわたしを見て、安室さんが笑う。
「ふふ…すごい顔」
「!ちょ…見ないでください!」
「いつも、カメラに向かってキメている子とは思えないですね。
貸して?」
笑いながらそう言って、安室さんはわたしからペットボトルを取り上げると、難なくキャップを開けてわたしに手渡した。
「ありがと…
わたしだって、変な顔するし…
すっぴんはなかなかひどいし、いびきだってかくよ。
だけど、Lilaでいる間は、わたしに少しでも夢を見てもらいたいから…」
「そういえば、昨日の夜、いびきかいてましたねえ」
「えっ!!うそ!!?」
焦って安室さんを見ると、安室さんはまた笑いながらわたしの頭を撫でた。