【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第23章 The Little Mermaid ☆
ひとしきり、零の腕の中で泣いた。
歌えなくなった、価値のないわたしに零は僕がいるよと言ってくれた。
何度も。
まるで、自分をわたしの生きる理由にするみたいに、何度も何度も、一緒にいると言ってくれた。
それが、たまらなく嬉しかった。
気持ちを落ち着かせるためにお風呂に入り、まだ21時だと言うのにパジャマに着替えてベッドに潜り込むわたし。
零も同じ時間に、一緒にベッドに入り、わたしの肩を抱き寄せて腕枕をしてくれた。
「零…ごめんね。」
「何が?」
「…いろいろ」
生い立ちのこと、言ってなくてごめん
歌えなくなって、ごめん
こんなに心配させて、ごめん
本当に色んな想いが、ごめんという言葉ひとつで溢れた。
「何も変わらない。リラはリラだよ。」
零は優しく笑って言うと、わたしの目からこぼれる涙にキスをした。
そして、わたしの瞳の奥をじっと見つめてくる。
奥の奥まで。
不思議だ。
今まで、わたしの過去を知った人々はみんなわたしに同情の目を向けたのに、零の瞳はそれがない。
まっすぐ、わたしのことが好きだと言う気持ちだけが、わたしの心臓を貫いてくる。
「零…好き…」
「僕も、好きだよ。」
零に好きだと言われたら、わたしはそれだけで生きていたいと思ってしまう。
「…わたしの過去に何があったか、聞いてくれる?」
「…無理して話さなくていいよ?」
「ううん。…知ってほしい。
聞いて欲しいの。零に」
わたしは、あの忌まわしい記憶を初めて人に話す気になった。
今まで誰にも話したことない。
わたしの本当の家族の最期のはなし。