【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第23章 The Little Mermaid ☆
リラを捕まえないと、本当にどこかに行ってしまいそうな気がして、僕は思わずリラの腕を掴んだ。
「本当はあの時、わたしも死ぬはずだった。
あの時、この世から消えてれば、こんな辛い思いしなくて済んだのに…」
「リラ…?」
僕はリラの腕を引いて、身体をこちらに向けると、肩を掴んでリラの瞳を覗き込んだ。
リラは、涙で濡れた目で
それでも笑いながら僕に言った。
「歌えなくなっちゃった…」
「…え?」
「歌おうとしたら、声が出なくなるの…」
僕の頭が、真っ白になった。
歌えなくなった?
大好きで尊いあのリラの歌声が、聴けなくなった?
きっと誰よりリラが一番ショックなのに、それと同じぐらい僕も大きなショックを受けた。
リラは、ポロポロと涙を零しながら、僕の腕をぎゅっと掴んで、縋るように僕に言う。
「ねぇ、わたしから歌をとったら、何が残るの?
…歌えないわたしに、価値なんてないんだよ…
誰もわたしのこと、要らないって言うよ」
そう言って静かに涙を零すリラを、僕は咄嗟に力強く抱きしめた。
「…僕がいる」
「っれ…い…」
「僕がいるよ。ずっと、一緒にいる」
僕はリラの生きる意味になりたかったんだ。