第23章 The Little Mermaid ☆

いつの間にかボイストレーニングスタジオに到着していることに気付かず、わたしは上の空のままフラフラとブースへと移動した。



ボイトレの先生も、もしかしたら記事見たかな…


ちら…と先生の顔を見て見ると、やっぱりわたしに同情と取れる表情を向けた。

可哀想な子って目で見ないで…


「じゃあ、いつも通り発声からやりましょうか」


そう言われ、先生のピアノの音に合わせて音階を歌おうと口を開けた。


なのに


声が　出ない。



「…あ…れ…」


話し声は何ともないのに、いざ歌おうとすると声が出ない。


「Lila？」


ボイトレの先生が心配そうに首を傾げながらわたしの瞳を見た。


「…声が…」

「っ…山岸さん！」


先生は慌てた様子で山岸さんを呼びに行った。


わたしはこのとき、
きっと疲れが出てるだけだ。
明日になればまた歌えるようになる。

なんて呑気に考えていたけれど、周りの人間から見ると明らかに不自然だったようだ。

ボイトレは中止、このあとのレコーディングも中止して、山岸さんに車で東都大学病院に連れて行かれた。


「山岸さん、わたし喉は何とも無いよ？」


そう言うわたしに何も返事をせず、山岸さんが向かったのは耳鼻咽喉科ではなく、心療内科


どうして心療内科？
と、頭で思ったけれど、何も言わずに中に入り、お医者さんの前で簡単な検査をした。


そして下された診断結果は…