【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第23章 The Little Mermaid ☆
いつものメンバーとの打ち合わせなのに、まるでみんなわたしの事を初対面の人みたいに見てくる。
じっと顔を見てきたと思えば、ぱっと目をそらす。
あの当時、周りの人間から向けられた視線と全く同じだ。
実の親に置いて行かれた可哀想な子
非情な政策をした外務大臣の子だから自業自得
1人だけ助かり天涯孤独になった哀れな女の子
そんな目でわたしを見ないで…
刺すような視線を全身に感じながら、わたしは次のボイストレーニングの現場に向かおうと山岸さんが運転する車に乗り込んだ。
山岸さんも、バックミラー越しにチラチラこちらを見てくる。
山岸さんですら、こんな風になんて声をかけていいのかわからなくなってるのだから、
関わりの浅いスタッフがわたしを腫物みたいに見るのは仕方がないのかもしれない。
仕方ないとわかっているけれど、同情の目でずっと見られ続けるのって、思ってる以上にキツい。
これからどうなるんだろう。
ライブをするためにステージに立った時、客席のみんなはどんな顔してわたしを見るの?
武道館、全部埋めても、全員がわたしを憐れむような目で見るの?
そう考えるだけで、胸の奥がムカムカして吐き気がする。
わたしが必死に守ってきた居場所から、誰もいなくなったらどうしよう。
この間風邪をひいた時に見た夢みたいに、わたしはまた孤独になって、周りから同情の目を向けられながらひっそりと生きていくの?