【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第22章 風邪引き彼女と過保護な彼氏
しばらくしてトレーに乗せて零が持ってきてくれたのは梅干し入りのお粥。
「お米食べるの、久しぶりだ…」
ぽつりとそう溢し、お粥を見るとふわりといい匂いが漂う。
「熱いうちに召し上がれ」
そう言ってスプーンを手渡す零に、わたしから思わず甘えが言葉になって飛び出した。
「零くん。食べさせて?」
じっと零を見つめながらそう言うと、零は珍しくかあっと顔を赤くしてわたしを見た。
「…君は、突然そんな爆弾を…」
「ふーふーしてね」
はぁぁ…とため息を吐いて悶える零をよそに、熱で頭がおかしくなってるわたしは子供のように零に甘えた。
零はスプーンでお粥を掬うと、ふーふーと息を吹きかけて冷ました後、わたしの口元に持ってきた。
「リラ、あーん」
食べさせてとせがんだのはわたしなのに、いざあーん。と言われると照れ臭くて顔が赤くなる。
熱なのか、照れなのかわからないまま赤くなった顔で、ぱく…と零が差し出したスプーンのお粥を口に含んだ。
まるで、降谷零みたいな優しい味がした。
「ん…美味しい!」
「良かった。
熱が下がる魔法の粉をいれておいたから」
「っふふ。零が言うと、本当みたい」
そう言って笑うと、突然零の顔が近づいてきた。
もしかしてキスされる…?
そう思いながらドキドキして、風邪なのか零のせいなのかわからないほど心臓が苦しくなる。
そして唇が重なるかと思いきや
ぺろ…
零の舌がわたしの口の端についていたご飯粒を掬い取った。
「っ…!」
「あれ?顔、赤いですよ?」
「れ、零のせいだよ!」
間違いなく風邪じゃなくて零のせい!
零はとぼけてあははと笑いながらわたしの髪を撫でた。
だけど、零の作ってくれたお粥には本当に魔法がかかってるみたい。
食べるとだんだん元気になってきた気がする。
「ほら、食べたら薬飲んで寝てください?」
「零が添い寝してくれないと寝ない」
そんなワガママを言うわたしに、零はため息をついて笑う。
「困った歌姫だな。
これ片付けてシャワー浴びてくるから、しばらく待ってて?」
そう言って零はわたしのおでこにキスをしたあと、寝室を後にした。