【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第22章 風邪引き彼女と過保護な彼氏
ふーふーと荒い息を吐きながら、熱に浮かされた頭で怖い夢を見た。
突然、わたしのそばから全部無くなる夢を。
声が出なくなって、歌う場所を奪われ、
わたしの元からたくさんの人間が去っていく。
暗い闇の中で、声を無くした価値のないわたしに、ひとり、またひとりとわたしに背中を向け、最後に残った零も悲しそうに微笑んだあと、くるっと背を向けた。
「待って!零…!」
そう言いたいのに声にならない。
必死でその背中を掴もうと手を伸ばすのに、届かなくて暗闇の中に消えてしまう零。
そしてわたしは、ひとりぼっちになる。
歌も仕事仲間も、ファンも
今の家族も、大好きな人も
全部失ってしまう。
暗闇の中で、一筋の光すら見えない。
「っ!」