【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第22章 風邪引き彼女と過保護な彼氏
久しぶりに引いた風邪は思った以上に過酷だった。
前に熱を出したのは数年前のこと。
あの頃は、一人暮らしだったというのもあり、熱があることを自覚しながらも誰にも言わずに仕事に行き、発熱したまま歌番組の収録に参加した。
気合と根性で収録を終わらせると、その日帰宅してぶっ倒れたっけ…
きっと今日だって、零がこうして止めてくれなければわたしは仕事に行ってた。
それだけ、わたしにとって歌うことがわたしの全て。
だけど最近、歌と同じぐらい零のことも大切で、歌がなくなっても零がいれば大丈夫。
そう思うと少しだけ気持ちが軽くなる。
自分の弱いところを見せないようにしなくてもいいんだ。
強くありたいと虚勢を張らなくていいんだ。
もしもわたしが歌えなくなって空っぽになったとしても、零なら腕を広げて受け止めてくれる気がした。
まあ、わたしから歌がなくなるなんてありえないんだけど。
零の匂いがするベッドでひたすらに震える身体を温めていると、玄関が開く音がした。
零が帰ってきた。
そう思いながらドキドキしながら寝室のドアが開くのを待ってると、思っていたよりすぐに開いた。
帰宅して、冷蔵庫に買ったものを入れるよりも先に、わたしの様子を見にきてくれた。
「どう?具合。熱測って」
「熱下がったよ?」
そんな嘘をつくわたしをすぐに見抜く零は、わたしの髪を撫でなら言う。
「じゃあ証拠見せて?」
「…たぶん下がったよ?」
あくまでも下がったと言い張るわたしを見て、零は呆れたようにため息をついた。
「はぁ…君は、本当に仕事熱心というか…」
「零は熱出たら仕事行かないの?」
「それとこれとは話が別です。
ほら、熱測って?」
ほら。零だって絶対風邪引いていても仕事に行くくせに。