【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第3章 金髪のボディーガード
わたし、何やってるんだろう。
安室さんが泣いているのを見て、考えるよりに先に身体が動いていた。
気づけば、安室さんをぎゅっと抱きしめて髪を撫でている。
安室さんは一瞬戸惑ったように身体を揺らしたけれど、諦めたようにわたしの胸に額をつけた。
男の人でも、泣くんだ…
しばらく肩を震わせた後、安室さんはゆっくりとわたしから身体を離した。
「…すみません。」
「こ、こっちの方こそ、勝手に抱きしめたりして…すみません」
「いや。僕が突然泣いたから…すみません」
「わ、わたしがstand by meなんて歌ったから…」
そんなやり取りをしていると、安室さんがハハッと笑いながらわたしを見た。
「キリないですね」
そう言って、涙に濡れた目で微笑みながらわたしを見て、ぽんぽんと頭を撫でた。
「さっき言ってた…元彼女のこと、そんなに好きなら、復縁すればいいのに」
「それが出来たら苦労しませんよ。
…復縁は100%あり得ません。」
「そうなんだ…」
「傷心だけど、リラが僕のために歌ってくれれば元気になりますよ」
安室さんは、半分冗談でそんなことを言ったけど、わたしは思わず安室さんの手を握って真剣な表情で言った。
「うん!何回でも歌うよ?
…だから、そんな顔しないで」
自分の歌で、誰かが救われるなら喜んで歌いたかった。
そんな、世の中の悲しみ全部背負い込んだように、笑わないで…
「ありがとう。
これから、短い間ですが、改めてよろしくお願いします」
安室さんはわたしの前に手を差し出した。
躊躇いながらも、わたしはその手を握る。
大きくて、温かい手…
「こちらこそ、よろしく」
その手を力無くぎゅっと握った。