【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第21章 君は僕のもの
安室side
あてもなく、夜の中RX-7を転がした。
こんなふうに出てきてしまって、リラはきっと気にしているだろうな…
ふとリラの困った顔を思い出し、僕はため息を吐いた。
僕も、まだまだ子供だと言うことか。
何なら、年下のリラの方がずっと大人なのかもしれない。
僕たちの関係が進展するときは、いつもリラが僕の手を引いてくれていた気がする。
告白だって、先に気持ちを伝えてくれたのはリラだった。
そんなもうどうしようもないことを考えながら車を走らせていると、気付けばあの海に来ていた。
路肩に車を停めて、砂浜まで歩くと腰を下ろし、真っ暗な海を眺めた。
この海で前の彼女と別れてボロボロだった僕を救ったのは、ラジオから流れてきたリラの歌声だった。
まだ一年も経っていないのに、随分と昔のことのように思えた。
リラの仕事は、そんなふうに人を笑顔にする。
歌だけでなく、きっとドラマ出演も大事な仕事なんだろう。
実際、蘭さんや園子さんも楽しみにしていると言っていたしな。
いつの間にか、忘れていたよ。
リラはLilaだということを。
リラとの距離が近づきすぎて、つい僕のものだと思ってしまう自分がいる。
みんなの憧れのLilaなんだ。
謝ろう。
こんな風に喧嘩がしたい訳じゃない。
僕がちゃんとリラの仕事を理解していなかったのが悪い。
そう思い直し、僕は家に戻ろうとまた車の中に戻った。