【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第21章 君は僕のもの
「…ドラマの撮影、大変?」
試すように、その話を振った。
「大変!もうセリフが全然覚えられなくて…
明日から1話目がオンエアなの!
撮影はもう終盤で…」
特に何とも思っていないようなそぶりでそう話を続けようとするリラの声を遮るみたいに僕から言葉が溢れる。
「聞いてなかったよ。
ラブストーリーのドラマに出るなんて」
珍しく少し乱雑に言い放つような言い方になってしまったのを、リラは驚いた顔をして僕を見た。
「あ…ごめん。
なんか、改めて言うのも変かな?と思って。
仕事だし、意識しすぎだと思われるんじゃないかなって…」
きっとリラにとってはただの仕事のひとつで、全く気にするほどのことじゃないんだろう。
もしかしたら僕と付き合う前から決まっていた仕事だったのかもしれない。
それに悪気があったわけでもない。
仕事だ。
僕にとっての公安警察の仕事と同じように、リラにとっても大事な仕事。
わかってる。
わかっているのに、でも…
今話したら、リラにとんでもなく冷たいことを言ってしまいそうで、自分が少し怖くなる。
リラを傷つける前に、頭を冷やそう。
そう思い、僕はリラの手を冷たく払い除けた。
「ごめん。…ちょっと頭冷やしてくるよ」
僕はそれだけ言うと、リラに背を向けて、たった今リラが帰ってきた玄関から外に出ていった。
「零…」
後ろからリラが僕の名前が呼ぶ声が聞こえたけど、目を瞑って聞こえないふりをしてそのままマンションを出た。